会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
文書作成日:2020/04/09


 大企業は、2020年6月よりパワーハラスメント(以下、「パワハラ」という)対策が義務づけられる。中小企業は、2022年4月からの義務づけ(2022年3月までは努力義務)ではあるものの、どのような取組みが必要なのか、社労士に相談することとした。

 いよいよパワハラも、2020年6月より対策が義務づけられますね。当社は中小企業のため、義務化は2022年4月ですが、防止に向けた取組みは早めに始めることが効果的だと思っています。

 なるほど。それでは、まず今回の概要をお伝えした上で、会社に求められる対応を解説しましょう。

 はい、よろしくお願いします。

 今回のパワハラ対策の義務化は、労働施策総合推進法に定められています。労働施策総合推進法は、以前、雇用対策法という名前の法律でしたが、働き方改革関連法によって名称がかわりました。

 パワハラ防止法という法律があるかと思っていましたが違うのですね。

 新聞などではこの法律がパワハラ防止法と呼ばれることもありますが、実際の法律はもう少し幅広い内容を規定しています。さて、この中でパワハラの定義がされているのですが、内容は以下の1〜3までの要素をすべて満たすものとしています。

  1. 優越的な関係を背景とした
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  3. 労働者の就業環境が害されること

 これらをすべて満たすとパワハラに該当するということですか?

 基本的な考えはそのとおりです。ただし、これは定義であり、客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、該当しません。つまり、上司が一定の範囲で注意・指導を行うことが、すぐにパワハラになるわけではないのです。
 そして、今回のパワハラ対策の義務化にあたって、どのようなものがパワハラに該当するか分かりにくいため、該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例が厚生労働省から示されました。

 以前、話題になっていましたね。

 新聞報道等をご覧になられましたか?例えば、代表的な言動の類型に挙げられている「精神的な攻撃」については、該当すると考えられる例と該当しないと考えられる例は、以下のように示されています。
[該当すると考えられる例]
 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
[該当しないと考えられる例]
 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする

 業務の遂行に関することであっても、必要以上に厳しく注意したり、長時間にわたって厳しく注意したりすることはパワハラに該当する可能性があるのですね。ただ、当然守るべきルールを散々破ったときに、必要に応じた厳しい注意をしたとしても、パワハラには該当しないということですね。

 その通りです。ここまで言わなくてもいいのにと、注意されている人や周りの人に感じさせるようなものは、やり過ぎで、パワハラに該当することになるのでしょう。

 なるほど。例として示されることで、定義だけのときよりもイメージしやすくなったと感じます。

 ただ、パワハラに該当するものが、この例として示されたものに限定されている訳ではありません。そして、今回の施行により、会社と従業員の責務が法律上、明確になりました。まず会社としては、パワハラを行ってはならないことその他職場におけるパワハラに起因する問題に対して、従業員の関心と理解を深めることが必要となります。また、従業員が他の従業員に対する言動に注意を払うように、研修などを実施することが求められています。
 ちなみに、この「他の従業員」とは、社内の従業員だけでなく、取引先等の従業員、派遣社員、採用の応募者などを含みます。

 採用の応募者まで入れると、対象はかなり広範囲ですね。

 はい。従業員だけでなく、外部の関係者も含まれている点も従業員に周知が必要でしょう。これに関連して、従業員の責務には、パワハラ問題に関する理解と関心を深め、他の従業員に対する言動に必要な注意を払うことがあります。
 パワハラというと、上司から部下に対するものをイメージしますが、それだけでなく、職場内の仲間外れ、外部の関係者へのパワハラも考えられます。そのため、管理職だけでなく一般の従業員に対する研修も重要になります。

 なるほど。管理職と一般の従業員に分けて、研修を実施すると良さそうですね。

 その方が、参加者の理解が進みやすいですね。
 そして、会社がこのパワハラ対策に対して、雇用管理上講ずべき措置として、セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」という」)や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(以下、「マタハラ」という)の防止措置と同様に、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、管理職を含む従業員に周知・啓発をすること、パワハラの言動を行った者は厳正に対処する旨の方針やその内容を就業規則等に規定することなどが求められています。

 まだ就業規則にパワハラに関する規定をしていなければ、整備が必要ということですね。

 そうですね。この他、相談体制の整備が求められます。セクハラやマタハラの相談窓口はすでに設置されていましたね?

 はい、私も相談窓口担当者のひとりになっています。

 この相談内容の対象にパワハラも加えて、広く相談に対応する形になります。

 なるほど。パワハラも相談の対象とし、相談窓口の再周知もしていきたいと思います。


>>次回に続く



 今回はパワハラ対策の法制化の対応をとり上げましたが、ここでは今後の精神障害の労災認定基準見直しの動きをとり上げましょう。精神障害に関する労災補償状況をみると、労災請求件数は年々増加しており、出来事別の支給決定件数では、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」と「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が一番多く、この「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」はパワハラに近しいものになります。
 そして、今回の法制化により、パワハラに基づく労災認定のあり方が検討されており、今後、労災認定基準の見直しが予定されています。そのため、今後の動きにも注目しておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
厚生労働省「あかるい職場応援団」
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

 

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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